日本の住宅寿命を延ばす施策の一つとして平成21年6月にスタートした「認定長期優良住宅」制度は、主に一戸建て住宅で普及が進んでいます。長期優良住宅のあらましを知るとともに、そのメリットを考えてみましょう。
長期優良住宅とは?
これまでの日本では木造住宅の寿命が20~30年程度とされ、建て替えによる廃棄物の問題だけでなく、資源の浪費や建築時のエネルギー消費などの問題も抱えていました。また、住宅ローンの返済が終わってすぐに建て替え問題に直面すれば、国民の経済負担にも大きな影響を及ぼします。そこで質の高い住宅をつくることにより、それをできるだけ長く使うとともに中古市場での流通性を高めようとする観点から「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が平成21年6月にスタートしました。その基準によって認定を受けた住宅が「認定長期優良住宅」です。平成28年2月には、新たに増改築に係る基準も設けられ、中古住宅においても認定を受けることが可能になりました。
・木造一戸建て住宅の場合、長期優良住宅として認定を受けるための主な項目は以下のようになっています。
・劣化対策(少なくとも100年程度はもつことを想定)
・耐震性(建築基準法レベルの1.25倍以上または免震構造)
・維持管理・更新の容易性(内装や設備の清掃・点検・補修・更新など)
・省エネルギー性(断熱性能など)
・居住環境(地域内における良好な景観形成や、まちなみとの調和など)
・住戸面積(原則として75平方メートル以上)
・維持保全計画(将来を見据えた定期的な点検・補修などの計画)
共同住宅など、一戸建て以外の建物は、上記項目に
・可変性(居住者のライフスタイルに応じて間取り変更が可能な措置が講じられていることなど)
・バリアフリー性(バリアフリーに対応できるスペースが確保されていることなど)
がプラスされます。
長期優良住宅を買う・建てる際に受けられる特典
長期優良住宅として建てられた住宅を買う際、あるいは長期優良住宅を注文住宅として建てる際には、さまざまな税制上の優遇措置も用意されています。住宅ローン減税では10年間の最大控除額が一般住宅よりも100万円上乗せされるほか、住宅ローンを借りずに長期優良住宅を買ったり建てたりした場合でも所得税の控除を受けることができます。さらに登録免許税では所有権保存登記と移転登記の際に一般住宅よりも税額の軽減が受けられ、不動産取得税や固定資産税についても軽減措置や控除額の拡大が図られています。また、住宅金融支援機構が取り扱う【フラット35】では、適用金利を引き下げた【フラット35】Sの利用ができるほか、返済期間を最長50年とする【フラット50】は長期優良住宅が対象となっています。さらに、地域材を用いた長期優良住宅であることなど一定の要件を満たせば、国の「地域型住宅グリーン化事業」(長寿命型)により最大100万円の補助を受けられる場合があります。
また、増改築の場合は、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」により、最大250万円の補助を受けられる場合があり、【フラット35リノベ】では、適用金利の引き下げを受けることができます。
長期優良住宅を買う・建てる際に気をつけたいこと
長期優良住宅では建築費用がそれなりに割高となるとともに、認定を受けるための費用も必要となってきます。申請のための書類や添付図書の作成費用などもかかるため、長期優良住宅を検討する際にはそれらの費用負担も含めたうえで、税金などの優遇措置と比較しながらしっかりと考えなければなりません。しかし、住宅ローンを支払い終わった途端に建て替え問題に直面するというリスクがないことは、大きなメリットになるはずです。将来の中古住宅市場において長期優良住宅が優位になることも十分に想定されるでしょう。ただし、長期優良住宅として認定を受けた住宅は、将来にわたって定期的な点検や補修などを実施しなければなりません。少なくとも10年ごとに点検を実施したうえで、その記録を「住宅履歴情報」として保存することが求められます。それらが実施されない場合には、認定が取り消される場合もあります。